多言語対応で超ハイクオリティーなフリーフォント「Noto Fonts(Source Han Sans・源ノ角ゴシック)」 #LOVEFONT
この記事は#LOVEFONT Advent Calendar 2014の12日目の記事です。
去年に引き続き2度目の参加です。今年はつい先日話題になったばかりの巨大フォントプロジェクト、Noto Fontsを紹介したいと思います。
※本来は私の本ブログのほうに置こうと思ってたのですが、現在ブログがぶっ壊れていて復旧できていないので、一時的にGitHub Pagesに置いています。パーマリンクはhttp://blog.hakatashi.com/exhibit/noto-fonts/です。
※私はGoogleの中の人とかでは全くない完全な一般人なので、一部記述に誤りを含むかもしれません。間違いを発見した場合は遠慮なくご一報ください。
Noto Fonts…ってなんだったっけ?
Notoとは、Googleの主導により開発中のフォントプロジェクトの名前であり、Noto FontsはNotoプロジェクトにより制作された一連のフォントファミリーの名前です。最初のリリースは2013年7月に発表されました。
Notoは、単一のフォントファミリーにより世界中のすべての文字、ひいてはUnicodeの全文字を表現することを目標とする、いわゆるUnicodeフォントプロジェクトの一つです。
2013年? でもこの前話題になってなかったっけ?
Noto Fontsはその巨大さから、グリフ全体を単一のフォントファイルとして提供することをせず、対象とする地域・言語ごとにフォントを分割して提供しています。1
つい先日、2014年7月16日に公開されたのは、Noto Sans CJK、すなわち日本語、中国語、韓国語を対象とした文字セットです。これにより、多言語対応を謳うNoto Fontsを、日本語でも気兼ねなく使えるようになりました。
このCJKフォントの製作には、Googleのほかに、Adobeとのパートナーシップのもと、常州サイノタイプ、イワタ、サンドル・コミュニケーションの三社が携わっています。
「源ノ角ゴシック」っていうのは何? 別のフォント?
このGoogleとAdobeのパートナーシップには少しややこしい経緯があります。Noto Sans CJKというのはGoogle側から見た名称であり、Adobeは同一のCJKグリフをSource Han Sansの一部として開発しています。2これは同社のオープンソースフォントシリーズの第4弾であり、欧文としてRobotoをベースとした書体を含むNoto Sans CJKと異なり、シリーズ第1弾のSource Sans Proと組み合わせて使うことを想定しています。
このSource Han Sansには、各国での普及のため、各言語版のフォントにそれぞれ名称が付けられており、中国語では思源黑体、韓国語では본고딕、そして日本語では源ノ角ゴシックとなっています。なので源ノ角ゴシックとNoto Fontsは、一部の従属欧文などはそれぞれ異なるフォントが付属していますが、日本語だけに着目すれば概ね同じフォントといえます。
ほかのフォントとは何が違うの?
美しいデザイン
多言語対応を目標とし、日本語にも対応したUnicodeフォントは、Noto Fonts以前にもすでに幾つか存在しています。その中でもNoto Fontsと同様に比較的自由に利用できるものとして、Code2000やGNU Unifontなどが挙げられます。
その中でNoto Fontsを際だたせるのは、やはり何をおいてもその美しさ! 文字数を多く揃えないといけないUnicodeフォントでは、何かと文字のデザインがおろそかになりがちですが、Noto Fontsはそのような事情を微塵も感じさせない美しさを備えています。比べてみると一目瞭然です。(下図)
これは5年近くにわたりフォントを収集してきた自分の経験からの見立てですが、日本語部分だけ切り出してみても、普通に購入すると1万円以上の値が張るゴシック MB101や游ゴシック体などの商業書体にも劣らないクオリティーを備えているように感じます。(下図)さすがはAdobeが携わったフォントというべきでしょうが、これほどのフォントがフリー(Apache License 2.0)で提供されることにはまったく驚きを隠せません。
7ウェイトにわたるウェイト展開
さらに特筆するべきなのは、その多彩なウェイト展開(1つのフォントで複数の太さを持つこと)です。ThinからBlackまで7ウェイトに渡るウェイト展開は、日本語フリーフォントではほとんど類を見ません。3幅広いウェイトは、美しい本文組やデザインのためには絶対に欠かせません。
オープンソースフォント
そして、Noto Fontsはオープンソースフォントです。フォントでオープンソースというと奇妙に聞こえるかもしれませんが、要はそのフォントを生成するためのソース(元となるデータ)と生成スクリプトがすべて公開されているフォントのことです。CJKフォントのソースはGitHub上のSource Han Sansプロジェクトに置かれており、ここでIssueやPull Requestも受け付けています。なので、デザインが怪しい文字や明らかに出典に反する文字を発見した場合は、誰でもここから自由に報告や修正を行うことができます。ライセンスは、Apache License 2.0です。
CJKの字形の差別化
ひとくちに同じ漢字と言っても、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語、日本語では使用する字形に違いがあります。そしてこれはUnicode上の欠陥とも言われていることですが、CJK統合漢字では、これらのうち似ている字形を統合し、1つのコードポイントに割り当てているため、文字列データ上ではこれらの字形を区別することができません。4
そこで、Noto Sans CJKでは、同一の文字に対して複数の字形を制作し、それを各言語ごとのフォントに割り当てることによって、どの言語上でも自然な文字表示ができるように工夫されています。詳しくはAdobeのブログ記事などを御覧ください。
結局、Noto Fontsは何がすごいの?
以上の特徴をまとめると、以下のようになります。
- あらゆる言語・地域で、同じフォントが使える!
- しかもめっちゃ綺麗でウェイトもたくさんある!
- そんなフォントが自由に使える!
以上の特徴をすべて備えたフォントは、間違いなく史上初めてです。これはもう今すぐ使うしかありませんね!
じゃあ、どうやったら使えるの?
ライセンスについて
一応注意点として、Noto FontsはApache License 2.0で提供されています。なので利用者は自由に商用利用、再配布、派生物の再ライセンスが可能ですが、元のライセンスと著作権者の表示が求められます。
Noto Fontsのダウンロード
まず、Noto Fontsのダウンロードページに移動します。
下のほうに、Noto Sans CJK JPと書かれた部分があるので、その横にあるDOWNLOADをクリックするとダウンロードが始まります。
あとはダウンロードしたZipファイルを解凍してインストールするだけです。やったね!
Webフォントとして使うには
Noto Fontsはフリーなフォントなので、もちろんWebフォントにも使用することができます。Google FontsのEarly Accessから日本語フルセットのWebフォントが既に提供されています……が、おそらく想像がつく通り、日本語フルセットのWebフォントは話にならないほど重いのでおすすめしません。Webフォントとして使用する場合は自分でサブセットを作りホストすることをおすすめします。
まとめると?
みなさんNoto Fontsを使いましょう! 筆者は日常のデザインなどに留まらず、ブラウザや電子書籍リーダーのデフォルトフォントなどにも幅広く活用しています。健全な精神は健全なフォントに宿る!
さて、#LOVEFONT Advent Calendar 2014はまだまだ続きます。明日はgeorgek5555さんの記事です。お楽しみに。
著作権表示
Noto Fonts (c) Google Inc. Licensed under Apache License 2.0
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